研究課題
基盤研究(A)
本研究では赤外領域で稼動する「超高真空封止型赤外顕微鏡」を開発し、顕微鏡学的な実験手法により新奇な物性を示す物質の電子状態の研究に利用することである。「超高真空封止型顕微鏡」は本研究の申請者が発案し、開発したもので、観測試料と共に顕微鏡の機能全てを超高真空中チャンバー内に格納し、外部からこれを操作するという全く新しい機能を備えた、他に見られない長所を備えた顕微鏡である。本年度の目的はこの超高真空封型赤外顕微鏡を用いて、物理的に興味ある物性を示す強相関電子系物質の光学スペクトルの解析により、これらの物質の電子構造解明に関する研究を行うことである。本研究では以下の研究を行なって成果を得た。[1]高圧下で現れる氷VIIにおけるプロトン秩序化の赤外スペクトル高圧下で実現する氷VII相とVIII相は水分子の持つ酸素原子の位置は共通であるが陽子(プロトン)の配列が秩序(VIII相)-無秩序(VII層)転移することで大きく異なった物性を示すため大きな興味が持たれていた。しかし、この研究には10万気圧にも及ぶ高圧下での赤外分光実験が必要なことから他に例が無かった。本研究では圧力発生セルとしてダイヤモンドアンビルセルを開発し、高圧力下での顕微鏡分光実験を行い、多くの成果を挙げた。[2]高圧下で起こる金属から絶縁体相への電子状態のクロスオーバーの研究圧力による物質の電子状態の変化を観察する分光学的な実験は皆無である。本研究では高圧で絶縁体状態が安定化するという珍しい物性を示す銅スピネル化合物CuIr_2Se_4について、高圧下で起こる絶縁体相への電子状態のクロスオーバーを観測した。[3]試料の物理的性質に空間的に局所的な「ムラ」がある場合の顕微鏡学分光実験大きな試料が合成できても物理的に局所的な空間ムラがある場合が多いときは試料全体の平均の物性を観察することになる。本研究で開発した顕微鏡によりスクッテルダイト化合物の一つであるGdRu_4P_<12>についての良質な光学スペクトルを得て、その電子状態についての興味ある知見を得た。
すべて 2005 その他
すべて 雑誌論文 (4件) 文献書誌 (1件)
Physca B 359-361
ページ: 1186-1188
ページ: 844-846
Physica B 359-361