研究分担者 |
坂本 竜彦 海洋科学技術センター, 固体地球統合フロンティア研究システム, 技術研究員 (90271709)
川幡 穂高 経済産業省, 産業技術総合研究所, 主任研究官
岡田 尚武 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80111334)
雨宮 将美 日本電子エンジニアリング株式会社, 技術統括部, 主任研究員
長谷川 卓 金沢大学, 理学部地球学科, 助手 (50272943)
坂牧 俊夫 日本電子株式会社, 機器開発部門, 研究員
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研究概要 |
未解明の問題の多い数年〜数十年の気候変動の明かにするため,ミリメートル〜ミクロンオーダーの連続的元素分析を実現することが必要である.そのため本研究では,日本電子(株)の技術者とともに「蛍光X線地殻コアロガー(開発コードネーム"TATSCAN-F1")」を開発した.このTATSCAN-F1は,エネルギー分散型蛍光X線分析システムをベースにし,海底および陸上のコアおよび板状試料中の化学元素の定性および定量分析を,非破壊状態で連続的に測定できるシステムである.測定できる試料は,最長250mm,最大幅200mm,最大厚み100mmまで可能である.この装置は,試料表面を最小0.1mm間隔で,多元素,多鉱物の強度情報を自動的に連続的に収集する.試料ステージは,空間分解能0.1mmの自動ステップ(ステップ条件は可変)であり,ライン分析および2次元面分析ができる.測定面までの高さを自動的に検知し,X線照射計高さを調整する自動フォーカス機能,スリット型のコリメータ(0.1,0.4,1.9mm)を有する.また,CCDカメラを搭載し,測定点を確認品柄分析でき,測定点の画像を保存する機能も有する.連続的かつ定量的な計測値は,統計解析やスペクトル解析することによって,変動の周期性や振幅変調など,より厳密な議論を可能とする.本研究では,TATSCAN-F1によって,始世代の縞状鉄鉱層,白亜紀中期の黒色頁岩層,第四紀完新世の網走湖の堆積物コアを解析した.縞状鉄鉱層では,線分析では石英からなるSiの層と鉄鉱物からなるFeの層の互層が明瞭に含有量変化として識別できる.面分析では,Siの層にはP,Feの層ではNa,Mg,Ca,Mn,Rb,Srが多いことが明かとなった.白亜紀中期の黒色頁岩層では,0.1〜1mmの厚さで繰り返すCaとAlの変動が検出された.網走湖の堆積物では,数mm〜1cm程度のSiの極大周期が観察され,極大ピークの間にはAlの変動ピークがみられる.網走湖の堆積速度は平均6mm/年なので,このTATSCAN-F1は,年内変動を実に見事に検出していることになる.
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