配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
2003年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2002年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2001年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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研究概要 |
ディラック粒子とはスピンが1/2で荷電をもつ相対論的量子的粒子のことである.ディラック粒子の範疇を含む量子的粒子と量子電磁場が相互作用を行う量子系の数理解析的研究は,単に応用だけでなく,物質界の構造を根源から探究する意味でもたいへん意義深いものである.当該研究期間において以下の研究成果が得られた. 1.ディラック粒子と量子電磁場が相互作用を行う系のハニルトニアンはディラック-マクスウェル(DM)作用素と呼ばれる無限次元のディラック-シュレーディンガー型作用素で与えられる.この作用素は相対論的であるので,真空中の光速cをパラメーターとして含む.発見法的には,Cを無限大にとる極限は何らかの意味で非相対論的な系を記述するであろうと予想される.すなわち,それは,非相対論的な量子的粒子(ディラック粒子の非相対論的版)と量子電磁場が相互作用を行う系である.この系は,非相対論的量子電磁気学が対象とする系であり,そのハミルトニアンはパウリーフィールツハミルトニアンと呼ばれる,無限次元のシュレーディンガー作用素で与えられる.申請者は,この予想を数学的に解析し,DM作用素の非相対論的極限の数学的に厳密な意味を与えた.この証明のために,対称作用素の自己共役拡大のある理論を創始したことも副産物のひとつである. 2.DM作用素のスケーリング極限の存在.この極限はある実効的なハミルトニアンを与える. 3.量子的粒子(ディラック粒子を含む)と量子場が相互作用を行う系のある抽象版として,一般化されたスピン-ボソンモデル(GSBモデルと略)がある.これはA.Arai and M.Hirokawaによって1997年に導入されたものである.無摂動系が基底状態をもたない場合でも摂動系が基底状態をもつ場合には,系は束縛の強化をもつという.申請者はGSBモデルについて,適切な一般的仮定のもとで,束縛の強化の存在を証明した.
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