研究概要 |
研究成果の概要は以下のとおりである. 本研究は,米国フェルミ国立加速器研究所のテバトロン加速器およびCDF検出器を用いて陽子・反陽子衝突反応事象を観測し,そこで生成されたB粒子の崩壊事象を再構成することにより,遂行されている.CDFのRun-II実験は2001年に開始され,以来加速器のビーム輝度も高まり,現在までに瞬間輝度の最高値L:=4.7×10^<31>cm^<-2>s^<-1>を達成している.積分輝度では,1992年から1996年にかけて蓄積された110pb^<-1>を上回る170pb^<-1>相当の反応事象が2003年5月までに取得された.CDF検出器も大幅な増強が完了し,初期動作の確認・較正ののち,現在では安定した運転が行われている. B粒子崩壊の研究においては,シリコン検出器を用いた高精度の飛跡再構成と粒子識別が重要となる.前者について,Run-II実験では,シリコン飛跡検出器の情報をトリガーの第2段階で用いることにより,B粒子などの長寿命粒子の崩壊物である粒子を効率よく収集することが可能となった.これにより,B^^-O_S→D^+_Sπ-やB^O/B^^-O→π^+π^-などの終状態にレプトンを含まない崩壊様式が再構成されている.粒子識別については,新たにTOF検出器が導入され,設計値である100psの時間分解能をほぼ実現しており,低運動量領域でのK-π分離か可能となった.B^O_S中間子の崩壊ではK^±中間子が対生成される確率が高く,TOF検出器のもたらす効果は大きい.高運動量領域では,中央飛跡検出器での電離損失を用いた識別が得られている. 現在物理解析が進行中であり,ごく近い将来には,B^O_S中間子の寿命,B^O_S→D^+_Sπ^-崩壊の分岐比などの測定結果が得られる.また,B^O_S中間子系での質量の固有状態間の寿命差を測定する.さらには,フレイバー同定法の最適化を行ない,B^O_S-B^^-O_S振動の観測を目指す.また,B^O_S/B^^-O_S→J/ψφ,B^O_S/B^^-O_S→K^+K^-崩壊を用いたCP対称性の破れの探索を行なう.
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