配分額 *注記 |
12,600千円 (直接経費: 12,600千円)
2003年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2002年度: 4,900千円 (直接経費: 4,900千円)
2001年度: 6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
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研究概要 |
本研究では,有機半導体結晶・(BEDT-TTF)(ClMeTCNQ)が示す価数不安定性(中性-イオン性相転移)に着目して,低温・圧力下の相転移近傍における,構造,磁性,誘電応答の特徴を明らかにし,価数の異なる基底状態間の量子的な揺らぎにもとづく新規物性現象の開拓に取り組んだ. 本研究で得られた主な成果は以下にまとめられる.1.低温・高圧下における結晶構造解析:ベリリウムを用いたX線回折解析用等方性高圧力印加装置(特許出願中)の開発に新たに成功し,これを用いた相転移近傍における単結晶構造解析と,格子定数・対称性の変化を測定することに成功した.2.低温・高圧下における電子スピン共鳴測定:分子のイオン化により生じるラジカルスピンを電子スピン共鳴を用いて捉えることにより,中性-イオン性相間の競合過程を明らかにすることに成功した.圧力下における磁化率の温度依存性の解析の結果,相転移は一次転移的ではなく,転移前後で,中性相とイオン性相の割合が温度とともに連続的に変化し,転移温度よりかなり高温でも,熱揺らぎにより二つの相が一定割合で共存する「メゾ相」として保持されることが明らかになった.またこれが,磁化率が室温では圧力印加とともに指数関数的に激増する原因となることが明らかになった.3.低温・高圧下における誘電特性測定:低温量子臨界点近傍における誘電応答が,温度と周波数には依存しない特徴的なピーク構造を示すことを明らかにした.1,2の結果と比較により,これが基底状態間の量子的な揺らぎに由来するものと結論した. さらに同型構造を持つイオン性錯体・(BEDO-TTF)(Cl2TCNQ)において、特異な磁気-格子相転移の起源を明らかにした.さらにモット絶縁体(BEDT-TTF)(F2TCNQ)において,FET構造を利用した新手法による価数制御の実験を行うなど,研究の大幅な展開を図った.
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