研究概要 |
亜熱帯循環における永年密度躍層各部の水の起源を概観するため,既存の海洋気候値データにより,東経137度断面内の水の起源海域とそこからの移流時間を求めた。これを踏まえ,独自の高解像度海洋気候値データを用いて,永年密度躍層の主要水塊である亜熱帯モード水,中央モード水,東部亜熱帯モード水の沈み込み域と各モード水の低渦位の成因を明らかにした。とくに,中央モード水は,従来考えられていた大きな「水平注入」よりも,むしろ小さな「等密度線を横切る流れ」によって主に形成されることを示した。さらに,中央モード水と亜熱帯モード水が循環系中部・南部の亜熱帯前線形成に寄与していることを明らかにした。同様の高解像度海洋気候値データにより,西部亜寒帯循環の永年密度躍層を特徴づける中冷水の起源と移流パターンを明らかにした。 等密度面追随型プロファイリングフロートにより,1年半以上にわたる,中央モード水のサブダクションの準ラグランジュ的な観測に成功した。このデータに対応するシミュレーションを行うためのラグランジュ型一次元混合層モデルを作成し,亜寒帯循環の中冷水の形成過程に適用して,モデルの有効性を確認した。 東京大学海洋研究所研究船白鳳丸によって,混合層から永年密度躍層へのサブダクションが起こる晩冬期の直後に,中央モード水の沈み込み域を含む中部北太平洋域において集中観測を実施し,新たに沈み込んだ水の水平・鉛直分布,海水特性などを広範囲に把握できる多項目データを取得した。 国際アルゴ計画で投入された利用可能な全てのフロートのデータを解析し,亜熱帯循環北西部で,高気圧性渦に伴って永年密度躍層が深くなっている海域で,とくに厚いモード水が形成されること,および,亜熱帯循環の南部で,高塩分水の沈み込みによってバリアレイヤーが形成されることを明らかにした。
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