研究概要 |
申請者らは,現世や過去の地質試料の鉄同位体組成の大枠を確立し,それにより全地球史を通じての地圏/水圏と生物圏の相互作用を解明することを目的として,本研究を進行させた.次のような成果を得たが,研究の重要な部分については,現在も研究を進展させている. (1)第四紀の陸上温泉活動に伴って,バクテリアなどが関与して生成した堆積性鉄鉱床(群馬鉄山)について,その化学組成が極めて特異であることを見い出し,Resource Geology誌に発表した.さらに,地球化学的分別過程では説明がつかないほど大きな同位体分別を受けた鉄が存在していることを発見した.現在までに報告されている同位体分別としては最大のものである.Sciencc誌に投稿したが,長期間の査読の結果,最終的に受理されなかった.in situ分析に改良を加えて,近日中にScience誌に再投稿するつもりである. (2)群馬鉄山と同様の成因で生成した鉄鉱床(長崎県佐世保周辺地域)に,やはりおおきな鉄同位体分別が存在することを見出した.本鉱床においても,顕微鏡観察において,様々なバクテリアが確認された.まえ本鉱床では,はじめて軽い同位体異常が見つかった.現在分析精度を上げて,再測定しており,関連する現象については近日中にResource Geology誌に投稿する. (3)縞状鉄鉱層の化学的特徴についての重要な基礎データを得た.重要な国際誌であるPrecambrian Research誌に受理され,現在印刷中である. (4)プラズマ質量分析計に改良を施し,より精度の高いin situ分析を実現した.その結果を重要な国際誌であるJ. Anal. Atom. Spectrom.やAnalytical Chemistryに発表した.
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