研究概要 |
高圧下での粉末X線回折図形の質の向上、高温高圧相の合成のための、レーザーアニーリング法とレーザー加熱を可能にするNd:YAGレーザーを導入した。レーザーアニーリングの効果は大で、非静水圧によりブロードな回折線が、歪の解消により鋭くなり、Rietveld解析に耐えうる回折線を得ることができるようになる。アニーリング条件の最適化を興味の対象とする鉱物に対して行い、レーザーアニーリング法を活用しながら、主に放射光施設で高圧下での回折実験を行った。 高圧下で得られた粉末X線回折データの解析から、いくつかの物質についての圧縮挙動を原子レベルで記述した。KHCO_3、NaHCO_3、ゲータイトといった含水鉱物の圧縮挙動は、水素結合が存在する酸素-酸素間の短縮が主な圧縮機構で、水素結合の対称化に絡んで興味深い水素結合の強度と圧縮挙動の関係を得た。Al_2O_3,NiTiO_3に関しては、レーザーアニーリングを行いながら回折線を収集し、圧媒体固化後の圧力下でも信頼性のあるRietveld解析が可能なデータを得ることに成功した。レーザー加熱実験から、MgCO_3と鉄は40GPa,2000℃と40GPa,1000℃のいずれの条件でも、反応を示唆する結果は得られず、少なくとも下部マントル上部まではこの反応は起こらない。またCaSiO_3ペロフスカイトを試料とした実験では、圧力20GPa、温度1500-1600Kでの回折パターンを得た。DAC内の試料構成にはまだ改善の余地があるが、CaSiO_3ペロフスカイトの回折線そのものは比較的スムースであり、超高温高圧下でのRietveld解析に耐えうる質の回折線が収集できる可能性が示唆される。外熱式DACに油圧制御機構を組み込み、CaOの精度の高い状態方程式を得、CaSiO_3ペロフスカイトが下部マントル最下部の温度圧力条件で分解する可能性を議論した。
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