研究概要 |
本研究は元素分配の圧力変化が目的元素の各相における部分モル体積に依存する点に着目し,核とマントル間の親鉄元素分配の圧力依存性を明らかにするためにマントル側の主要なホストである珪酸塩メルト中の親鉄元素酸化物の部分モル体積を高温高圧下において決定することを目的としている。この目的のために高温高圧X線吸収法密度測定法を珪酸塩に適用するための技術開発を行った。高温高圧X線吸収法は任意の温度圧力でメルトの密度測定が可能な唯一の実験法である。しかし,これまで高温高圧X線吸収法で測定された物質はX線吸収の大きい金属などの重い元素に限られていた。一方,本研究でターゲットとなる珪酸塩は軽元素からなり,X線の吸収が比較的小さい物質である。特に高温高圧では圧力媒体,ヒーター,試料カプセルなどに試料は取り囲まれるため,試料のみのX線吸収を測定することは極めて難しい。また,高温高圧実験では試料サイズが常に変化するため,試料厚みの見積もり無しにX線の吸収から密度を正確な求めることはできない。本研究では入射X線に高輝度の放射光を用い,また,試料カプセルに単結晶ダイヤモンドリングを用いることにより,これらの問題点を解決し,珪酸塩メルトの密度測定に成功した。X線吸収実験はSPring-8のBL22XUにおいてキュービック型高圧装置SMAP1を用いて行った。BL22XUの立ち上げのために実験開始は平成15年からとなり,当初の目的である親鉄元素酸化物の部分モル体積の決定には至っていない。しかし,現在までにNa_2Si_2O_5-FeO系と中央海嶺玄武岩(MORB)組成メルトについて約3GP・1900Kの条件での密度測定に成功しており,X線吸収法により珪酸塩メルトについて部分モル体積が決定可能な精度での密度測定のレベルに到達した。
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