研究概要 |
60個の炭素原子がサッカーボール状に結合した分子,[60]フラーレン(C60)は,1985年の発見当初より,特異な形状と巨大なπ電子共役系をもつことから,新しい機能性分子への応用が期待されてきた.本研究者は,有機金属化合物を用いたフラーレンの化学修飾の研究を進める中で,C_<60>に対する有機銅化合物の付加反応が,5重付加という極めて珍しい反応形式で定量的に進行し,シクロペンタジエン構造を持ったフラーレン誘導体C_<60>R_5Hを与えることを発見した.このシクロペンタジェン構造は脱プロトンにより6π電子系のシクロペンタジエニルアニオンへと変換できる.5炭素配位子であるシクロペンタジエニル(Cp)型配位子を含む金属錯体は有機金属化学において中心的な存在である.特にフェロセンに代表されるメタロセン型錯体は剛直な分子構造,化学的安定性,レドックス活性,および導電性などの特性を有することから,機能性材料としての応用を指向する研究が活発に行われている.本研究は,先に我々が開発した5炭素配位型フラーレン配位子FCpを利用して触媒や材料として有用な機能分子を合成することを目的として行ったものである. 具体的には,C60への有機基多重付加反応をより完成度の高い反応に磨き上げるとともに,これにより生成する分子を,フェロセンなどとのハイブリッド型有機金属分子や,有機フラーレン二分子膜ベシクルおよび極性カラム状液晶などの機能性分子集合体へと導いた.さらには,C60への有機銅5重付加反応を2度行うことにより,ダブルデッカー型ビスCpフラーレンを合成することに成功した.これは本研究を分子エレクトロニクス材料として期待される導電性ポリマーの開発へと導く重要な研究成果である.以下にこれらの成果を発表論文、総説および紹介記事等によって示す.
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