配分額 *注記 |
10,200千円 (直接経費: 10,200千円)
2003年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2001年度: 5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
|
研究概要 |
(1)セレノメチル基を有するテトラチアペンタレン(TTP)ドナー,SMEO-ST-TTPの合成を行い,それらを用いた陽イオンラジカル塩の作製を行った。得られた塩のうち,(SMEO-ST-TTP)_2PF_6のX線構造解析を行ったところ,二量化したβ型分子配列をとることが明らかとなった。対応するメチルチオ誘導体,(TMEO-ST-TTP)_2PF_6が低温まで金属的伝導性を示すのに対し,この塩は100K付近まで抵抗の温度依存性はほとんどなく,その後金属的挙動を示した後,20K以下で若干の抵抗の増大が見られる。従って,(SMEO-ST-TTP)_2PF_6の金属状態は(TMEO-ST-TTP)_2PF_6に比べると若干不安定化しているものと考えられる。 (2)ピラン環を有するTTP系ドナーPDS-TTPを用いたラジカルカチオン塩(PDS-TTP)_2AsF_6は(BDT-TTP)_2AsF_6と同様のβ型ドナー配列をとることを明らかにした。この塩において,非対称なPDS-TTP分子はhead-to-tail型に積層するため,この方向における重なり積分はBDT-TTP塩よりもかなり小さくなると考えられる。この塩はクラックの形成に伴う低温部での抵抗増大が見られるものの,本質的に4.2Kまで金属的である。 (3)TTP骨格中にシクロヘキサン環を挿入したCHADTDTの合成に成功した。CV法により電気化学的性質を検討したところ,4対の一電子酸化還元波が観測され、期待通りジカチオンにおける分子内クーロン反発が増大している事が示唆された。分子軌道計算によるとシクロヘキサン末端の1,3ジチオール環にはHOMOの係数が無視できる程小さくなっており、伝導性錯体中において、分子がhead-to-tail型の積層構造をとった場合にはバンド幅の減少による金属状態の不安定化が実現できると期待される。
|