研究概要 |
本研究では,平均直径及び収率の異なる単層カーボンナノチューブ(SWNT)のガス吸着特性を吸着等温線および昇温脱離法により調べ,以下の成果を得た。 1.SWNTの作製と直径制御 ヘリウムガス中でのアーク放電法によりSWNTの作製を行った。SWNTの平均直径は,触媒金属に含まれる硫黄の濃度により1.2nmから2.3nmまで変化させることができるが、直径の増大と同時に収率が20%から1%まで減少した。 2.容量法による窒素および水素ガスの吸着等温線測定 未処理のSWNT試料の窒素及び水素の吸着等温線を液体窒素温度(77K)において0から400kPaまでの圧力範囲で容量法により測定した。その結果、細孔表面積は、ナノチューブの収率に対応して,それぞれ90から53m^2/gの範囲で変化したが,外表面積(94から99m^2/g)はほとんど変化しない事が分かった。また,水素吸着量(0.56wt%から0.50wt%)は,細孔表面積と対応して増減する傾向が見られたが,あまり顕著ではなかった。 3.重量法による水素の吸着等温線の測定 石英スプリングを用いた重量法により,低圧力領域(50Torr以下)において,直径約1.28nmのSWNTに対して,水素ガス吸着等温線を測定した。77Kにおいて,先端の閉じた(閉端)SWNTで約2.7重量%,先端の破れた(開端)SWNTで5重量%,室温においては閉端SWNTで約0.3重量%,開端SWNTで約0.7重量%であった。 4.昇温脱離装置の試作と脱離スペクトルの予備測定 140K,1気圧で水素を10分間吸着させた後,毎分4度Cで昇温脱離測定を行った。質量分析計により水素の強度をモニターした結果,170K付近に脱離のピークがあることを見出した。
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