研究概要 |
本研究では,内部に劣化・損傷部を有する構造部材に各方向から一定周波数の大振幅の超音波を入射し、レーザー超音波検出器を用いて透過波をデジタル収録し,それに含まれる高調波(入射周波数の整数倍の周波数の波)成分を検出し、X線CTで開発された再構成アルゴリズムを非線形超音波用に拡張し,劣化・損傷部の3次元分布を明らかにすることを目的とする. 研究で得られた主な成果を以下に示す. 1.高調波振幅超音波CTを開発する基礎として,水浸法で正方形厚板内部に高減衰領域を含む鋼サシプルと内部に高減衰領域を含まない対比試験片の透過波振幅比の対数値を数百本のビームパスについて測定し,昨年度開発した超音波透過波減衰を用いるCT再構成アルゴリズムを用い,減衰係数分布の再構成を行い,5%以内の誤差で減衰係数分布を再現できることを明らかにした. 2.上記手法を正方形厚板内の直径2mmのドリル孔に適用したところ,孔表面での散乱減衰が材料内部微視構造による散乱減衰に比べて極端に大きいにもかかわらず適当なペナルティ値を測定値に乗ずることにより,入射波波長の2倍程度の直径を持つ孔の位置及び直径を再構成できた. 3.水浸法により,2次高調波だけを抽出するアナログフィルターを用いて,通常の超音波欠陥画像と同様に,特別な波形処理装置を使用せず高調波振幅の画像化ができ,通常の超音波反射画像では検出できない,液相拡散接合した異種金属界面の微細構造鋼内の非金属介在物などの異種接合部を画像化できることを実証した. 4.上記1,2と3を組み合わせることにより,2次高調波CTの再構成が可能となる.通常の劣化・損傷固体材料の基本波振幅に対する2次高調波振幅比は1%程度であるので,内部微視き裂集団を含み,顕著な接触型音響非線形性が発現する損傷材料に適用すれば非線形超音波CTが実現できることが明らかとなった. 5.本研究で得られた成果の一部を特許として申請する準備を進めている.
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