研究概要 |
本研究はクリーンな水が生み出す活性種に着目し,これを表面クリーニングに適用しようとするものである.すなわち,以下の3点を目的としている. 1.水および気体を溶存させた水,およびこれらの蒸気にエキシマレーザ光を照射した際の活性種について,分光機器を使用して明らかにする.2.生成が明らかになった活性種について,金属,シリコン,ガラスなどの材料表面にどのような作用を及ぼすかについて,物性面からシミュレーションにより検討する.3.上記の結果に基づいて最適な照射条件を導き,この条件によりクリーニングを試みる. 昨年度の研究でArFエキシマレーザ照射によって水を分解することができ,分光分析よりOH, O2+,H2O+,O2が生成していることを明らかにした.さらに,硫酸酸性雰囲気下でこれらの分解生成物によりヨウ化カリウム,過マンガン酸カリウムを酸化・還元出来ることがわかった.また,これらのラジカルにより,銅を酸性雰囲気下でエッチングできることが明らかになっている. 本年度は,亜鉛,ニッケルを用い,同様に実験を行った結果,亜鉛では中性雰囲気下においてもエッチングが進み,純水を用いることで亜鉛程度以上のイオン化傾向をもつ金属をエッチングできることが明らかになった. この酸化力を利用して,穴あけ加工後のタッピングオイルのクリーニングに適用を試みた.φ8mmのめくら穴に純水を入れ,ArFエキシマレーザを出力150mJ,繰り返し周波数30Hzで10分間照射した.その結果,SUS304上のタッピングオイルを焦点近傍約5mmの範囲で除去できた.
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