研究概要 |
主流の逆圧力こう配が,平板上を発達する乱流境界層での熱伝達機構に及ぼす影響を実験的に調べ,以下のような結論を得た。 1.圧力こう配を伴う乱流温度境界層の風洞実験 零圧力こう配および逆圧力こう配条件下で,V型熱線マイクロセンサーと,線径0.625μmの極細冷線プローブを組合せた同時測定を行い,壁垂直方向の乱流熱流束を含む統計量を直接測定したその結果,普遍対数温度分布など零圧力こう配流れで成立する現象が,逆圧力こう配流れでは破綻することを定量的に実証した。一方,境界層全体の特性量で整理した場合,速度場は非平衡であっても温度場に及ぼす逆圧力こう配の影響はほとんど認められなかった。従って,壁面摩擦係数が急減するにも拘わらず熱伝達率が維持されるため,損失の少ない高効率な熱流体機器を設計する上で逆圧力こう配の付加は極めて有効であり,その特性を把握することは非常に重要といえる。 2.圧力こう配を伴う乱流温度境界層における乱流構造の解析 逆圧力こう配乱流境界層では,内層の乱流構造が不活性化し,外層の構造との相互干渉に顕著な変化が生じる。このような乱流構造の変化が,温度場にどのような影響を及ぼしているのかを,統計的解析法に基づきコンピュータ処理を行って詳細に調べた。乱流熱伝達機構と運動量輸送左機構の非相似性について検討するために,乱流の準秩序構造に基づいた条件付きサンプリング法であるトラジェクトリ解析および周波数空間における非線形干渉を抽出可能なバイスペクトル解析により詳細に検討した。その結果,逆圧力こう配流れで運動量の輸送を担っている高周波数のスイープ運動と,運動量輸送について寄与が減少している低周波数のイジェクション運動は,どちらも熱輸送に対しては大きく寄与し,逆圧力こう配流れにおいて熱輸送が低減せず高い値に維持されていることが明らかとなった。 なお,これらの結果の主要部は,Webでデーターベースとして公開する。公開するアドレスは,http://heat.mech.nitech.ac.jp/database/EXP.htmlである。
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