研究概要 |
本研究は,「省エネルギー創生に向けての潜熱エマルジョンスラリーの高密度蓄熱と高度利用法の開発」を課題として,平成13年度〜平成14年度の両年度にわたって日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))を受けて行われた。本研究の目的は,新たな熱エネルギーシステム開発のキーテクノロジーである固液相変化熱利用潜熱蓄熱技術を展開する上での問題点の抽出とその解決方法を提案し,最終的に潜熱蓄熱材としてのエマルジョンの特定と高性能潜熱蓄熱槽に関する基礎情報の解析から,この種の潜熱蓄熱技術の学術的体系化と実用化に向けての資料の提供を行うことである. 本研究では,始めに潜熱エマルジョンスラリーの選定及びその物性の評価を行い,各種物性値(粒子径,熱伝導率,比熱,潜熱,粘性など)に対する有用な関係式の誘導を行った.そして高温及び低温空気泡群を用いた直接熱交換による新型蓄熱槽の最適化に関する研究を行うため,疎水性薄膜フィルターによって,熱搬送媒体である無数の微細な高温空気泡群と潜熱エマルジョンスラリーとの直接熱交換による蓄熱実験を行い,微細気泡群による伝熱面積の増大とその流動に伴う攪拌効果を気泡群挙動の可視化実験,熱伝達量及び空気流動抵抗の測定結果より総合的に解明した.さらに,この種の潜熱蓄熱槽の最適設計に必要である潜熱蓄熱材の濃度と充填量,高温空気温度,空気流量及び空気湿度をパラメータとした蓄熱完了時間,蓄熱効率及び熱伝達に関する無次元整理式の誘導を行った.最後に,この種の潜熱蓄熱システムとしての総合評価を,既存の潜熱システムとの比較検討で行い,本研究で提案する蓄熱システムの優位性の確認が完了した.
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