研究概要 |
人の弁別閾が標準刺激の一次関数で表される場合について,コンスタントスケーリングを用いてスレーブ側の力変化をマスタ側で知覚可能にできる条件を導出した.同時に知覚可能にするためのスケーリング係数の下限値を示した.弾性係数ならびに粘性係数に対する弁別閾の測定結果に,求めた条件を適用して考察を行った.弁別閾測定結果がもつ近似関数からのばらつき,個人差によるばらつきが存在する場合のスケーリング係数の調整についての考察を行った. また,操作者と操作対象の特性を考慮したマスタ・スレーブ間のスケーリング条件を示した.そして,マスタ・スレーブ間をスケーリングした場合のシステムの安定性と追従性を解析した.極の実部の動きより,スケーリング係数を大きくすると,システムは一端不安定になるが,その後安定に戻るという結果が得られた.周波数応答を調べることで,スケーリングによりシステムの速応性が向上することがわかった. 新たに弁別感度を定義して解析を行った.比較的広範囲のスケーリング領域で,弁別感度がほぼ1〜3%の高感度となっていることがわかった.さらに,高感度域では,スレーブ側での位置(力)偏差が抑えられることを示した.各被験者は,初期値によらずある特定のスケーリング係数を最終的に選択した.また,選択された係数での歪みはかなり小さく,感度も比較的高い領域であることから,力学的にも妥当な選択がなされていると言える.スケーリングされた剛性と調整された人のインピーダンスとの間には,一種のマッチングが図られていると考えられる. 運針用スレーブマニピュレータを新たに開発し,背面投射型球面ディスプレイをコアとしたマスタスレーブシステムを構築した.スケール効果を考慮し,人の作業動作に促した直観的遠隔操作を実現した.制御ループの中に人間が入っているという特性を利用し,運針術の解明・伝達を行った.実験結果から,適度なスケーリングが操作者の運針を導く助けになること(スケーリングの有効性)を示した. さらに,幾何・物理モデリングならびに位相変形を伴う切断・刺通モデリングのアルゴリズムを構築し実装した.
|