研究概要 |
空間電荷分布計測装置(既存装置および13年度申請備品)を用いて、空間電荷特性および直流絶縁性能に及ぼす影響について定量的検討を行い、高性能な直流固体絶縁材料開発に対する重要な指針を得た。以下に主な成果を列記する。 1.高電圧直流電力ケーブル材料として注目されている低密度ポリエチレン(LDPE)とそのブレンドポリマーの空間電荷特性と直流絶縁性能がLDPEのモホロジー,添加剤,ポリプロピレンのブレンド等と密接に関連していることを明らかにした。また,LDPEの密度を変えることにより空間電荷の挙動を制御できることを指摘した。 2.LDPEの空間電荷が電極から注入された電荷により支配されており、また半導電層からのキャリヤ注入が容易であることを明らかにした。 3.ポリイミド、ポリェチレンテレフタレート、テフロンFEPの空間電荷挙動を明らかにした。特に、ポリイミドでは表面層に吸着した水分によりキャリヤ注入が著しく増大し、ホモ空間電荷が増大することを明らかにした。新たに構築した部分放電(PD)計測システムとスペクトラムアナライザー(13年度申請備品)を組み合わせ絶縁劣化診断システムと,高速ゲートイメージインテンシファイア(14年度申請備品)を用いて以下の成果を得た。 4.LDPE中のボイドを模擬した試料について,絶縁劣化診断システムを用いてPDパターンおよびPD電流の周波数スペクトルの経時変化を調べ,密閉ボイドの部分放電劣化のメカニズムを明らかにした。これらよりPDによる高分子絶縁材料の寿命評価が可能であることを明らかにした。 5.高分子絶縁材料の寿命と密接に関連する電気トリーの開始・進展のメカニズムを、模擬トリー中の部分放電特性と発光像の経時変化から解明するとともに、PDによる電気トリーの診断法について考察した。 これらの成果は、直流絶縁システムの高性能化や寿命評価の信頼性向上に大きな貢献をするものである。
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