研究概要 |
本研究では,積層フェリ磁性膜および交換結合二層膜の微細加工とその磁区構造の観察を行なうとともに,X線顕微鏡を利用した微小磁区観察にについて検討を行った. (1)極薄Ruスペーサ層を有する積層フェリ膜を作製し,その磁気特性を調べた.成膜条件を最適化し,大きな層間反強磁性結合を示す積層フェリ膜を作製できた. (2)ビーム径約100nmのGaイオンビームを利用して磁性薄膜を正方形,長方形および円形,楕円形に微細加工を行い,磁気力顕微鏡(MFM)により磁区構造を観察した.NiFe(20nm)/Ru(0.3nm)/NiFe(10nm)積層フェリ素子の磁区構造は加工した素子形状・寸法の範囲内で還流磁区構造を示し,大きな反磁界の存在を示す結果となった.一方,両磁性層の膜厚をほぼ等しくしたNiFe(12nm)/Ru(0.3nm)/NiFe(10nm)素子では,高アスペクト比の素子では単磁区構造をとり,積層フェリ構造とすることにより安定に単磁区状態を作り出せる可能性があることが分かった. (3)どの程度微小な磁区が安定に存在しうるかを調べるため,磁界変調によって記録した光磁気記録の微小な磁区をX線顕微鏡によって観察した.組成の異なる磁性膜上に孤立磁区のマーク長を100nmから,30nmまで変化させて記録した媒体について観察したところ,補償組成の媒体で30nmの記録に対して孤立磁区が形成されていることが分かった.Huthモデルに基づくシミュレーションで観察された記録特性が説明できることが分かった.
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