研究概要 |
橋梁や都市内高架橋は,交通ネットワークにおいて代替性の低い重要なリンクをなしているため,その地震による被災は,通過交通の安全性を阻害し緊急対応を遅らせるのみならず,社会・経済に大きな悪影響を及ぼし復旧・復興へも甚大な影響が生じる.本研究は,地震後使用性を考慮した橋梁の耐震性能の予測手法及び評価法の確立を目標に,具体的には,(1)地震後の車両の通行可能性の観点から,橋梁上部構造に対する要求性能を明確化する,(2)支承や落橋防止構造部分の損傷,衝突を考慮した橋梁の3次元地震時挙動モデルを構築し,地震後の使用性予測を実現する (3)地震後の使用性を確保する構造設計のあり方を提示する ことを目指した.研究成果としては,まず,使用性の観点から橋梁に求められる要求耐震性能を,実際の被災記録に基づいた調査によって,明らかにするとともに,地震時応答解析モデルの構築を進めた.調査にあたっては,兵庫県南部地震時における被災状況から,許容される路面の許段差・目違い等を明示した.また,これら使用性に関連する許容値と下部構造,支承,橋桁,エキスパンションジョイントなどの損傷度を関連付けることで,エレメント毎に要求性能を整理した.さらに,支承の損傷の影響や桁端での衝突について実験的に地震時挙動を明らかとすると共に,上部構造の地震時挙動を精緻に再現する基礎的な解析モデルを構築した.さらに,ここで得られた解析モデルによって,兵庫県南部地震の実際の被災の再現を試み,支承の損傷と上部構造の3次元動的挙動を再現することに成功した.また,定量的な車両走行性に関わる性能指標の構築を行い,支承部分および落橋防止装置・システムの保有性能と使用性の関連,および緩衝材など各種制震デバイスによる使用性の向上可能性についても解析的に検討を行った.それに基づいて,使用性に基づいた構造設計のあり方を提示すると共に,効率的な使用性向上策を提案した.
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