研究概要 |
風の乱れに起因する構造物の不規則振動(ガスト応答)解析手法は,風速変動の空間相関と空気力や表面圧力の空間相関が等しいという過程を用いているが,低周波数領域では後者が前者よりも高く,とくに長周期構造物の応答解析精度に問題が残されている.この空間相関の違いを明らかにするため,断面辺長比(幅員/桁高)1および5の2次元矩形断面を対象に,格子乱流中および3次元変動気流中で表面圧力や物体近傍の流速の多点同時計測を行った.3次元変動気流は,模型スパン方向に3分割された中央部と両側とで周波数が異なる. 1:5断面では剥離バブルの形成そのものが表面圧力のスパン方向の相関の増大に密接に寄与することが明らかとなった.また,剥離バブル内の低圧部(渦によるものと考えられる)が瞬間的にスパン方向に伸張する様子が確認され,剥離バブル内では渦の瞬間的なスパン方向への伸張が生じている可能性が示された.一方,1:1断面でも圧力の相関増加がみられたが,圧力変動成分の急激な伸張は明確には確認されず,高い相関の要因は断面前縁から発達する剥離せん断層のスパン方向の一様な(2次元的な)形成にあるものと判断された. また,平板の空力アドミッタンスであるSears関数の解析上の前提条件である「鉛直変動気流の空間分布は平板通過時に不変とする」点に注目し,断面辺長比1:30の平板に近い矩形断面を対象に断面表面圧力および断面近傍の鉛直変動風速を計測した.その結果,計測波形には正弦波からの歪みが明確であり,上の条件が必ずしも成立しないものの,上下面の圧力差は正弦波に近く揚力の評価には結果的にこの条件がほぼ満足されていることが同時に明らかとなった.変動波形から,着目する周期成分を波形を歪めることなく抽出するために,計測データのアンサンブル平均処理を試み,その応用性が期待できることが明らかとなった.
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