研究概要 |
近年,土壌汚染や地下水汚染に代表される地盤環境問題が全国各地で問題になっているが,汚染物質の地中での挙動を定量的に評価し,汚染土壌を効率よく改善するためには土壌の汚染度を簡便かつ正確に測定することが重要である。しかし,現在,土壌の汚染度の測定法としては,実際にサンプリングする方法が唯一であり,この方法では,原位置において土壌汚染度の経時的な変化を把握することは困難である。そこで,本研究では,現在所有のFDR-V計測法を土壌汚染度の調査装置として原位置での計測システムに発展させるために,今年度は,まず現在所有のFDR-V装置で室内試験による基礎物性値の把握を継続して行い,現有装置の欠点を踏まえてより安価で周波数によるロスか少ない現場計測タイプの装置を開発し,原位置で経時的な汚染度の変化を測定する方法について研究を行った。 (1)所有のFDR-V計測装置の改良 従来から所有していたFDR-V計測装置に対して,より厳密な測定を可能とするためにデータ収集装置及びシステムのキャリブレーション方法について検討した。具体的には,ケーブルによるノイズのロスを抑え,また測定プローブの取り外しが可能で,高速データ収集を行うシステムに改良した。 (2)原位置における土壌汚染度の調査方法の検討(現場計測装置の開発) 現有装置の欠点を踏まえて,安価で周波数によるロスか少ない現場計測タイプの装置を開発した。測定周波数は従来のタイプのものより低い100MHz〜3GHzの領域で安定した測定結果が得られる。そして,原位置で経時的な汚染度の変化を測定する方法について検討するために,現場測定におけるノイズの発生要因の検討,ケーブルの限界長さ等の検討を行い,ノイズの除去方法を確立することでその有用性を確認した。 (3)土壌の複素誘電率特性の把握 測定の基本となる物質の複素誘電率特性を把握するため,新旧2つのFDR-V計測装置を用いて数種類の土質試料,汚染物質に対して室内での測定を実施した。その結果,両装置による測定結果の誤差がわずかであり,従来と同様の評価方法で土壌汚染度の調査装置として利用が可能であることを確認した。 (4)地盤の有効間隙率の測定手法の検討 地盤中に水とは異なる液体を注入してその誘電率の変化から地盤の有効間隙率を測定する手法に関して検討した。
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