研究概要 |
メタンは炭酸ガスに次ぐ温室効果ガスであり、固形廃棄物(都市ごみ)埋立地はもっとも大きな人為的発生源であると報告されている。本研究では、有機性固形廃棄物を主体に受け入れる実埋立地の異なる深さから採取したボーリングサンプルを用いて埋立地土壌のメタン放出に関わる微生物生態の構造と動態を16SrRNAアプローチによる分子生物学的手法を用いて解析した。廃棄物埋め立て土壌の深さ100cm部分のサンプルから古細菌由来の16SrDNAクローニングを行い、ランダムに72クローンを選択した。この72個のクローンはRFLP解析により分子系統解析を行った結果、6クローン全てが既知のメタン生成古細菌に近縁であることが判明した。しかし、それらクローンの塩基配列は、既知のメタン生成古細菌の配列と100%の相同性を示すものは存在しなかった。この結果から、新規のメタン生成古細菌が存在する可能性が示唆された。比較的浅い埋立地部位では有機物の嫌気的分解過程で生成されたH_2はホモ酢酸生成菌によって酢酸に転換される反応が卓越することを示した。さらに、埋立地深部(10m以上)では有機物分解過程で生成した酢酸は酸化され水素が生成し、高温性の水素利用のメタン生成細菌が優占すること、など重要な知見を提示した。また、模擬カラムにより嫌気・上層好気・準好気性埋立地を再現し,炭素・窒素の物質収支を基に埋立地における廃棄物初期分解過程の詳細な観察・解析およびFISH法によるメタンの放出に関与する微生物の検出・定量を行った.3つの埋立地条件ともに実験開始から150日目までの酸生成期に,投入した炭素および窒素の13%, 40%が浸出水として急激に流出した.それ以降の長期にわたる酸生成・メタン生成期では,嫌気性:著しいVFAの蓄積と緩やかなメタン生成,上層好気性:廃棄物層上部においてメタン酸化細菌1.3×109cell/g-dry-wasteを検出,準好気性:早期の浸出水有機汚濁物質濃度の低下と著しい二酸化炭素放出など,特徴的な挙動を示していた.初期挙動解析の結果,発生ガスによる温暖化寄与率は準好気性が最も高いものの,好気領域の拡大は浸出水有機汚濁物質濃度の低下およびメタン放出抑制を促進できる可能性が示唆された.
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