研究概要 |
本研究の目的は,合理的かつ実用的で設計者の能力を最大限に発揮させ得るような高層建築物(制震ダンパー付骨組も含む)の構造設計支援システムを構築することにある。本年度に得られた主要な成果は以下の通りである。 (1)平成13年度の成果を拡張し,積層ゴムと粘性ダンパーからなる免震層を中間階に有する建築立体骨組に対して,第一段階として,水平二方向の成分を有する設計用地震動に対して所定の層間変異分布を示すような水平二方向の層剛性分布を,逆問題型定式化に基づきそれぞれ見出し,第二段階として,第一段階で得られた立体せん断型構造物と等価な動特性を有するような立体骨組構造物の各部材剛性を最適設計手法により見出すという,通常の構造設計において行われている,骨組からせん断構造物への置換とは逆の発想に基づく,最適部材断面設計法を展開した. (2)平成13年度に引き続き,平成12年に改正された建築基準法から新たに導入された「限界耐力計算」に基づく安全性検定条件をみたすような建築骨組の各部材断面を,上記(1)と同様の手法により見出す最適部材断面設計法を展開した.本年度は新たに,表層地盤による地震動の増幅効果を考慮した場合の設計法を展開した. (3)固有周期に関して非単調に増加する変位応答スペクトルを有する設計用入力地震動が作用したときに,最大層間変位分布が指定した分布を下回ってかつ比例し,目的関数(性能を代表する指標とコストを代表する指標の重み付き和)を最小にするような層剛性分布を見出す手法を開発した.次にこの手法を拡張して,それぞれが固有周期に関して非単調に増加する変位応答スペクトルを有する複数の入力地震動を設計用入力地震動として採用したときに,それぞれの入力地震動に対する最大層間変位の包絡値の分布が指定した分布を下回ってかつ比例し,前記目的関数を最小にするような層剛性分布を見出す手法を開発した.
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