研究概要 |
有機ハイブリッド系制振材料は高分子マトリックス内で分散された有機低分子フィラーの分散形態により(1)相溶型(2)ドメイン析出型に分類できる.相溶型としてアクリルゴム(AR)/4,4'チオ-ビス(3-メチル-tertブチルフェノール)(TMBP)、ドメイン析出型として塩素化ポリエチレン(CPE)/N,N'ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DBS)を選び,制振・音響特性と相構造の関係,制振特性に及ぼす気相成長炭素繊維(VGCF)添加効果を解析した.AR/TMBP有機ハイブリッドではTMBPの充填量が0〜200phrで損失正接(tanδ)が2.5〜6.0に増大し,この間Tgは-20℃〜40℃に増大する.このように有機低分子の充填に伴う損失正接の増大とともにTgも大きく増大するのが有機ハイブリッド系制振材の特徴である.このことから,有機低分子の充填量により制振効果が発現する温度域、周波数特性を制御できることがわかった.またこの系にVGCFを3wt%を添加することにより,損失正接を減少させることなく、貯蔵弾性率を約3倍に増大させることが明らかにされた.CPE/DBS系有機ハイブリッドでは有機低分子の充填に伴い有機低分子リッチドメインの形成により損失弾性率と損失正接が急激に増大することが判明した.この系を50℃で熱処理することによる構造の再編成(リストラクチュアリング)によって発生する微細・粗雑な結晶により,垂直吸音率の測定において低周波数領域(350Hz)と中周波数領域(1100Hz)に未熱処理試料では見られない新たな吸音ピークが観測された.微細・粗雑結晶の形態及び生成量を制御することにより,低周波数領域の音響特性を制御できる可能性が見出せた.
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