研究概要 |
本研究では,金属材料中の微視的な領域における水素の存在位置と存在量を同時に観察することのできる顕微水素イメージングシステムを用い,水素分布可視化法による水素吸蔵合金組成の最適化手法の開発を第一の目的とした.また,この可視化手法により微視的な領域における水素分布を定量的に測定し,試料の微細組織や試料構成元素分布と水素濃度の関係を調べ,水素吸蔵合金中の水素の挙動を解明することにより水素吸蔵合金の水素化特性の向上を図ることを第二の目的とした. 試料はBCC単相あるいはBCC/Laves 2相型のV-Cr-Ti合金およびTi-Cr合金であり,試料の組成および熱処理温度を変化させることにより試料の微細組織の制御を行った.これらの試料に水素を添加し,水素分布を視覚的に観察することにより,試料中の水素分布と微細組織との関係を調べた.試料中の水素濃度は,局所的な試料組成の違いに敏感であり,また微細組織にも依存した.水素浸透の初期過程において,水素はLaves相中に多く存在するが,水素溶解量が増大するにつれて水素はBCC相中に多く存在するようになった.これから,主として水素を吸蔵するのはBCC相であることが明らかにされた.適切な熱処理を施こしてBCC単相とすることにより,現在MH電池などに用いられているLaNi_5合金の水素吸蔵量の倍以上の,3.5mass%もの水素吸蔵量を示すTi_<50>Cr_<50>合金を開発することができた.
|