研究概要 |
本研究の目的は,将来の耐酸化性超高温材料として期待されている各種金属ダイシリサイドを酸化様式の観点から分類し,最終的にデータベースに基づいた酸化モデルを構築することによって,優れた耐酸化性を有する金属ダイシリサイドの条件を明らかにすることにある. これまでの実験結果に関する検討から,形成される酸化皮膜は温度に依存するが,便宜的に次の3つのグループに分類できることを明らかにした. (1)金属酸化物とシリカの混合酸化物皮膜を形成するダイシリサイド(TaSi_2,NbSi_2,CrSi_2) (2)Siの選択酸化によってシリカ皮膜を形成するダイシリサイド(FeSi_2,CoSi_2) (3)金属酸化物の蒸発によってシリカ皮膜を形成するダイシリサイド(MoSi_2,WSi_2,VSi_2,ReSi_<1.75>) どのような酸化皮膜が形成されるのかについては,(1)皮膜内酸素イオンとシリサイド内Siの拡散係数の相対的関係,(2)皮膜/下地界面での熱力学(金属,Siおよび酸素のポテンシャル),(3)金属酸化物の蒸発の3因子が強く関与している酸化モデルを提案した. 1273K以下の温度領域での耐酸化性はFeSi_2,CoSi_2およびCrSi_2が特に優れており,VSi_2も比較的良好な耐酸化性を示す.VSi_2を除いてこれらのシリサイドは融点,相安定性,金属酸化物(Cr_2O_3)の蒸発などの観点から1273K以下の温度での耐酸化性材料としての利用が期待される.VSi_2も融点がそれほど高くはなく,超高温下では基本的にMoSi_2がもっとも高いポテンシャルを有している. さらに,ボロン添加による酸化皮膜特性の改質についての検討を行い,NbSi_2などの耐酸化性改善の方法について明らかにした.
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