研究概要 |
Zn-Mg, Zn-Al硫酸塩水溶液中に添加剤として4級アンモニウム塩を添加して電析を行なうと,電析物中にMg元素,Al元素が取り込まれることが判明した。その際の水素析出,Zn析出の部分分極曲線はともに,第4級アンモニウム塩を添加することにより大きく分極することがわかった。電析物中のMg, Al元素の含有率は,4級アンモニウム塩添加による水素およびZn析出の分極が大きくなるほど増加した。4級アンモニウム塩として,アルキル基および親水基の種類を変化させたものについて調査したところ,水素およびZnの析出は,親水基にベンゼン環の有る方が,また疎水基のアルキル基が長い方がより抑制されることがわかった。ベンゼン環あるいはアルキル基が,水素およびZnイオンの陰極面への拡散を妨害していることも考えられる。電析物中のMg, Al元素の含有率と皮膜中4級アンモニウム塩量には相関関係が認められ,Mg, Al元素の含有率が高い電析物では4級アンモニウム塩の含有率も高くなっていた。この結果より電析物中にMg, Al元素が取り込まれる過程で4級アンモニウム塩の陰極面への吸着が重要な役割を果たしていることが推察される。電析物のXPS分析では,Mgが金属として析出しているのか酸化物として巻き込まれているのかは不明である。一方,電析膜中のAl元素は,X線回折図形より,θ-Al_2O_3として存在することがわかった。また,TEMを用いた構造観察の結果,電析膜中のAl_2O3の結晶粒はほぼ全面に均一に共析しており,その大きさは10nm程度とかなり微細な状態であることが確認された。電析物の耐食性は,皮膜中にMg, Alが共析すると大幅に改善された。特にMgが0.5%含有されると,SSTの赤錆発生時間が純Znの電析物に比べ4倍程長くなった。
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