研究概要 |
摩擦攪拌法によりADC12,5083アルミニウム合金の結晶粒微細化し,その室温における特性を調査した. 通常の立てフライス盤のベッドに鋳鉄製台座を取り付け,短冊状に切り出した試料を鋳鉄製の押さえ板で固定し,次にProbeを反時計回りに回転させながら試料に挿入し,Shoulderが板表面にあたったところで挿入を停止し摩擦熱を発生させてから,ベッドを一定速度で送り,処理終了後回転工具の送りを止めて,回転工具を回転させたまま抜き取る方法を採用した.二回処理材は,一回目の処理が終わった時点で回転工具を抜き取らずに,そのまま一回目の処理方向と逆の方向に送り,処理開始点に戻ったときに送りを止めて回転工具を回転させたまま抜き取った.摩擦攪拌処理条件は5083,ADC12ともに最も結晶粒径が細かくなり,欠陥の発生しない条件(回転数985rpm,送り88mm/min)で行った.結晶は以下の通りである. 1)ADC12の処理材の組織は微細化されており,処理回数が増すほどSi晶出物は微細化された. 2)ADC12の強度は処理回数に依存しなかった. 3)ADC12の伸びは処理回数が増すほどに増加した.これに反映して,破壊面形態が脆性的なへき開面から,延性的なディンプル状破面に変化した. 4)5083の処理材は未処理材より等軸でかつ微細な結晶粒から成っていたが,強度と伸びには大差なく,破面形態の違いも認められなかった. 5)FSP処理は,室温よりも高温での機械的性質を大幅に向上させるものと思われる. FSP処理は,室温での機械的性質よりむしろ,高温での機械的性質の大幅に向上させるものと期待される.事実,予備実験として行ったADC12の高温引張試験において500%を超える超塑性変形を発現した.今後の課題は,ADC12及び5083における高温変形機構について調査し,さらには,展伸用熱処理型アルミニウム合金の室温での機械的性質および高温での機械的性質について精査することであろう.
|