研究概要 |
本研究の目的は、接着性動物細胞のマイクロパターンをガラス基板上に作成し,電気化学顕微鏡によってその呼吸活性などをパターン形状と対応させて評価し,細胞チップ・デバイスの開発に展開することである。2年間の研究を通じて、以下の成果を得た。 (1)マイクロパターン培養に関して:ポリジメチルシロキサンによるマイクロスタンプを作成し,これを用いて細胞接着タンパク質(フィブロネクチン)を疎水化ガラス基板上にパターン転写した。子宮頚癌細胞(HeLa),ウシ大動脈内皮細胞,ニワトリ胚由来心筋細胞,PC12神経様細胞などを培養したところ,これらすべての細胞株が〜5μmの精度でパターン化された。 さらにマイクロスタンプ法を改良し,フィブロネクチンおよび細胞非接着性ポリエチレングリコールを共有結合によってパターン固定した結果,細胞パターンの耐久性が顕著に向上した。マイクロメートル精度の細胞パターンが,血清中であっても5日以上保持された。 (2)細胞アレイの呼吸活性評価にして:パターン培養したHeLa細胞の呼吸活性を針状Ptマイクロ電極を用いた電気化学顕微鏡によって評価した結果,自由に伸展している細胞に比べ,フィブロネクチンパターンによって形状が規制された細胞の呼吸活性が低かった。これは,細胞周期と細胞形状との関連を示唆し基礎的に重要なだけでなく,細胞アレイを用いるアッセイシステムの構築においてパターンサイズや形状の最適化が必要であることを示す結果である。 (3)細胞間結合活性の評価に関して:心筋細胞や神経細胞のパターン培養にも成功し,ギャップ結合およびシナプス結合の活性についても薬理学的な応答を評価することができた。パターン化した細胞を微笑流露デバイスに組み込み、パターンの局部に薬剤を投与する試みにも成功している。
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