研究概要 |
金属薄膜や金属微粒子の表面には,金属中の電子のプラズマ振動と光が結合した表面プラズモンが存在する.このような表面電磁波は,"表面局在性"や"電場増強"など通常の光にはない性質を秘めている.本研究は,このような表面プラズモンをナノメートルサイズの極微小空間内に存在する光励起子場としてとらえ,光センシングおよび光化学反応への応用を検討した. 表面プラズモンは,Kretschmann光学配置を利用して共鳴励起させた.金を蒸着させたガラス基板をプリズムの底面にマッチングオイルで貼り付け,角度を変えながらHe-Neレーザー光をプリズムに入射させ,プリズム底面で発生したエバネッセント波を利用して金薄膜表面に表面プラズモンを共鳴させた.金薄膜上に種々のモノマーや重合開始剤,およびマットリックスポリマーを含む溶液をスピンコート法によって塗布し,共鳴条件下重合反応を試みた.トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)などの多官能性のビニル系モノマーにボレート系開始剤(TBAB),および感光波長領域をコントロールするためシアニン系色素(NK-529)を分光増感剤として共存させた複合型光開始系において光重合に成功した.表面プラズモンを利用した重合反応では,その"表面局在性"を反映して超薄膜の形成が期待される.形成させた光硬化膜の原子間力顕微鏡観察から,実際にその膜厚が数十〜数百nmであることを確認した.表面プラズモンのしみだし長は225nmと算出され,表面プラズモンを利用すれば可視光でもナノスケールの超薄膜を容易に形成できることがわかった.
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