研究概要 |
高感度電気複屈折測定装置を開発し,代表的な無定形高分子であるポリスチレンとポリイソプレンについてガラス転移領域を含む広い周波数領域で測定を行った.ポリスチレンの場合には,その電気複屈折の発生は主として誘起双極子によることが回転異性体モデルを用いた計算から予想されている.ポリスチレンの複素カー係数には温度-周波数換算則が適用でき,また得られた合成曲線には,ガラス転移領域で比較的単分散に近い分散が観測された.定常電場除去後の複屈折の緩和過程は,粘弾性-ひずみ複屈折の同時測定から得られる高分子鎖の配向緩和過程と一致すると見なせることが明らかになった.この結果は,バネービーズモデルを用いた理論でうまく説明できた. 一方,ポリイソプレンのカー係数では,温度-周波数換算則により得られた合成曲線に分散が二つ観測された.複素カー係数の実部と直流成分との比較により,高周波数領域の分散は誘起双極子によるもので,低周波数領域のそれはA型永久双極子によることが明らかになった.誘起双極子による寄与はほとんど分子量依存性を示さなかったが,A型永久双極子による寄与は顕著な分子量依存性を示した.誘起双極子による寄与は,ポリスチレンの場合と同様に粘弾性-ひずみ複屈折の同時測定から得られる高分子鎖の配向緩和過程で記述できた.一方,永久双極子による寄与については,からみ合い系においてもバネ-ビーズモデルで予想されるように誘電緩和スペクトルとよい対応関係を示すことが明らかになった.
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