研究概要 |
スクラムジェットは,飛行マッハ数が約6以下では亜音速モード,それ以上では超音速モードで燃焼することにより,広いマッハ数範囲で高性能を維持する。このモード遷移は,燃料の混合及び燃焼と,発熱により生じる擬似衝撃波間の複雑な相互干渉であり,詳細な機構は解明されていない。本研究では,この機構を解明するために,相互干渉現象を切離しながら同様の状態を作り出し,各現象を独立に変化させて互いの影響を調べた。 まず室温の大気を吸込んだ超音速流中にヘリウムを噴射する実験を行った。下流に設置したバルブの開度を調整することにより,擬似衝撃波を発生させ任意の位置に固定することができた。ヘリウムの混合は擬似衝撃波の存在により著しく促進され,擬似衝撃波が上流にあるほど効果は著しかった。測定部下壁面から噴射した噴流は主に横方向に広がるが,先頭衝撃波の位置によって拡散の方向にも違いが見られた。 次に,下流のバルブを撤去し,プラズマトーチにより高温気体を噴射して擬似衝撃波を発生させること試みた。プラズマトーチの作動気体には窒素あるいは水素/窒素混合気を用い,投入電力と水素体積割合を変化させて流れの状態を測定した。投入電力及び作動気体の水素割合の増加に伴って,ダクト出口断面のマッハ数分布が一般化チョーク条件を満足した時に,プラズマジェット噴射による衝撃波が擬似衝撃波に発達し,上流へ遡り始めることが分かった。 擬似衝撃波の先頭が,ダクト高さの約4倍上流に達すると,壁圧分布が噴射孔の真上付近にピークを持ち下流で減少していく。また,この時擬似衝撃波内のショック・トレインは噴射孔上流にしか見えず,燃焼が亜音速モードに遷移したことが分かった。出口面で測定した発熱量は主流が準1次元的に熱的チョークするに必要な値より低かった。燃焼モードの遷移により,噴流の貫通は向上するが,水素質量分布の最大値や燃焼効率に急激な変化は見られなかった。
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