研究概要 |
一個体の根系は形態的,生理機能的に異なる根によって構成されている.本研究では,それらの根の,とくに水の吸収・輸送能と関係すると考えられる形態や内部組織構造に着目し,根系全体の水吸収・輸送構造を明らかにしようとした. ソルガム種子根系において,分枝能,長さ,直径が異なる2種類の異形側根(L型とS型)の存在を確認した.これらの側根の間では,カスパリー帯,下皮・内皮の発達程度,導管の構成,種子根軸への導管連絡などの水吸収・輸送に関わる内部組織構造も異なり,相対的にS型が吸収能に優れ,L型が輸送能に優れると考えられる構造を有していた.また,両者間は,根端における細胞分裂能や,伸長帯における細胞伸長能にも差異があり,そのことが発育学的な差異をもたらしていると考えた.ササゲにおいても,分枝能,長さ,直径が異なる2種類の側根が存在した.これらの側根の間では、導管の構成にも差異が認められた. 形態学的な情報を基にしてソルガム種子根系(8日齢)における水の吸収・輸送構造を組み立てた.その結果、吸水能力の高いL・S型側根と,通導性が高いと考えられる種子根軸によって構成されている種子根系基部側で水吸収が盛んで,向頂的に減少していく構造を形成していると推察した. アポプラストのトレーサーで,蛍光色素であるSulphorhodamine Gを用い、水耕したソルガム根系に蓄積したSulphorhodamine Gの量から実際の水吸収量を推定した.その結果は,上に述べた内部組織構造からのみでは,実際の水吸収・輸送のすべての説明することができず,齢の進行にともなうシンプラスト経由の水移動や導管の水通導性,種子根内の導管間連絡などを考慮する必要性を示すものであった. 本研究の結果,ソルガム種子根系は,異なる根や部位間で,役割を分担しつつ吸水・輸送機能を発揮していることが示された.
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