研究概要 |
酪農生産に伴う環境負荷の総合評価をLife Cycle Assessment(LCA)分析により行った.併せて酪農・畜産の個別経営にかかわる環境問題の分析と環境勘定によりマクロ評価を行った.その結果は以下である.北海道の酪農専業地帯に位置し,LCAに必要な詳細データが入手可能であり,調査協力が得られた有限会社「オコッペフィードサービス」(OFS)とその構成農家にLCAを適用した.OFSは,飼料生産・TMR(混合飼料)製造協業組織であり,構成農家の放牧地以外の全農地を借り上げ,農地管理から収穫,調製,家畜ふん尿の施用等の農地に関わる一切の作業から,収穫したサイレージと購入飼料によるTMRの調製,構成農家への配送を行っている.構成農家全体では,総飼養頭数935頭(乳用牛835頭,肉用牛100頭),総経営耕地面積411.9ha(草地361.6ha,飼料畑37.8ha,放牧地12.5ha)であり,飼養・搾乳方式は,繋ぎ飼い・パイプラインミルカー方式7戸,フリーストール・ミルキングパーラー方式1戸である.本研究では,2002年7月に現地調査を行い,LCAの計測において必要なマテリアルデータを収集した.そして,マテリアルデータと既存文献から引用した排出原単位を用いて,各環境負荷物質(CO2,CH4,N2O,NOx,SOx,NH3,T-N,T-P)の排出量を推定し,各環境負荷物質を地球温暖化,酸性化,富栄養化の各環境問題に関連付けた.LCAの分析結果から,酪農経営の環境負荷物質排出において,地球温暖化対策では,畜舎での家畜呼気に由来するCH4とふん尿処理施設(特に堆肥盤)での家畜ふん尿に由来するN2O発生抑制対策が,酸性化対策では,畜舎とふん尿処理施設(特に堆肥盤)での家畜ふん尿に由来するNH3発生抑制対策が,富栄養化対策では,ふん尿処理施設(堆肥盤)での家畜ふん尿に由来するT-N,T-P流出抑制対策が効果的である.
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