研究概要 |
1)黒毛和種とホルスタイン種及びそのF1を識別できるDNA断片の検索;約2000プライマーにおよぶAFLP分析を行った結果、黒毛和種とホルスタイン種の識別に有効なAFLP断片45マーカーを開発した。これらのAFLP断片を利用して、黒毛和種とホルスタイン種およびそのF1の識別を行ったところ、夫々100頭レベルでの比較ではあるが,それらの品種を識別できることが明らかとなった。今後は、AFLPマーカーの由来となっている塩基置換の個所(SNPs)を明らかにし、PCR-RFLP法やマイクロアレー法によって、簡便に塩基置換を認識し、品種の識別に利用できるようにすることが必要である。 2)黒毛和種繁殖集団内での脂肪交雑の育種価で区分した上位25頭と下位23頭の雌牛のDNAを入手し,160プライマーセット、2,000DNA多型マーカーを目標に上下を区分できるAFLPマーカーの開発を行った。16種類のグループ特異的なマーカーが得られた。それらを使って、育種価の予測値とDNAマーカーから推定した総合遺伝子型値との関連を見たところ、r=0.92の極めて高い相関が得られた。そこで,次に,頭数を169頭にまで増加させ、育種価の予測値とDNAマーカーから推定した総合遺伝子型値との関連を見たところr=0.70の有意な相関が得られた。牛枝肉では,脂肪交雑評点とロース信面積との間には相関がある。そこで,ロース芯面積の予測育種価と総合遺伝子型値との関係も調査した所,r=0.63の有意な相関がまたしても得られた。このような手法による、牛の育種改良の試みは無いので、ここで開発した方法を用いれば、DNA多型情報を用いて牛を選抜するマーカーアシスト選抜が実現する事になる。これまでAFLP法のこのような利用は家畜では行われていないので、その成果は画期的なものである。また,この方法は牛に限らず、あらゆる家畜や植物の育種改良に利用可能である。
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