配分額 *注記 |
13,000千円 (直接経費: 13,000千円)
2003年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2002年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
2001年度: 6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
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研究概要 |
本研究では血清診断法の開発を最終目標とし,病態モデルの開発とその病態の解析の実施に主眼を置いて研究計画を作成した.しかしながら,本邦で最初の症例であったことから,研究の立ち上げに際しては,疫学調査と消毒後のモニタリングを実施するとともに,寄生虫学的,病理学的な知見の集積が図られた.最初に当該施設において本疾患が発生した経緯について調査研究を行い,アライグマの由来,飼育場の設置状況やサシプリングした土や糞便の集積場の寄生虫学的検査を行い,汚染状況および感染ルートを明らかにした.この調査により,アライグマ飼育施設が台風や大雨の影響により洗われ,下流域にあるウサギ飼育施設に虫卵で汚染された土砂が流入したために,大量発生に至った経緯が明らかにされた.同時に,これら自然発生したウサギについて詳細な病理学的解析がなされた.この中では,虫体の存在が全ての症例で確認できないこと,しかしながら,病理像,病変分布はステレオタイプであり,虫体が確認できない場合についても,本疾患の存在を考慮する必要があることが確認された.さらに,アライグマに寄生していたアライグマ蛔虫の所見から,発生のおよそ8週間前に当該施設に搬入されたアライグマが本蛔虫症に罹患していた可能性が指摘された.同時に発生の契機とならたアライグマがペットととして飼育されていた事実は,ヒトへの感染が身近な問題であることを認識させるとともに,ペットに由来する野生化アライグマでの感染があらためて認識された.病態モデルの一つとして,アライグマ蛔虫幼虫移行症の病態の一つであるヒトの片側性視神経網膜炎(DUSN)が,虫卵をスナネズミに投与することで作出するととができた.この病態モデルはDUSNに極めて類似した病態を示すことから,今後の解析に有用なツールとなることが期待されている.一方,血清診断法に関しては,現在研究が進行中であるが,診断特異性が高いアライグマ蛔虫幼虫代謝産物抗原の作製に目途がたち,その抗原特性をイヌ・ネコ・ブタ蛔幼虫のそれぞれの代謝産物抗原と免疫生化学的に比較検討している.
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