研究概要 |
強力な血管収縮性ペプチドであるエンドセリン-1(ET-1)による血管収縮は,主として細胞外からのCa^<2+>流入による。従来,このCa^<2+>流入経路は受容体作動性Ca^<2+>チャンネルと一括して呼ばれ,その分子実体は不明であった。我々のこれまでの研究により,生理・薬理学的には3種類のCa^<2+>透過性チャンネルがET-1により活性化されることを明らかにしてきた。本研究では,これらの受容体作動性Ca^<2+>チャンネル分子群をコードするcDNAの発現クローニングを行い,それら分子の構造および機能を明らかにすることを目的とした。発現クローニングのために,アフリカツメガエル卵母細胞の微量発現系を用いて,クローン化ETタイプA受容体cDNAからin vitroで合成したcRNAと血管平滑筋細胞から調整したmRNAを同時に発現させてスクリーニングを行う戦略を立てた。予備実験により,通常の2電極ポルテージクランプ法をアッセイ系として用いると,ET受容体を単独に発現させた場合でも大きな内向き電流が生じるため,mRNA由来の比較的小さいCa^<2+>チャネル電流の検出がほぼ不可能であることがわかった。このET受容体により誘発される内向き電流は,細胞内ストアから動員されたCa^<2+>により活性化されるCl^-であると考えられた。そこで,細胞内で動員されたCa^<2+>と細胞外から流入するCa^<2+>を区別するために,^<45>Ca^<2+>の取り込みをアッセイ系に用いることにした。このスクリーニング系に用いて,血管平滑筋細胞から作製したcDNAライブラリー(初期タイター,2.0x10^6pfu)のスクリーニングを行った。その結果,ET受容体により活性化されてCa^<2+>流入を惹起するクローンを16個単離することに成功した。現在,その構造および機能を決定しているところである。
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