研究概要 |
1.ほとんどすべての白血病で,野生型のWT1遺伝子が高発現しており,WT1mRNAは,汎白血病腫蕩マーカーである(Blood,84,3071,1994;Blood,87,2878,1996;Blood,2002,in press)。 2.白血病が再発すると,WT1の発現が著増する(Blood,88,4396,1996)。 3.WT1アンチセンスオリゴマーによって白血病細胞の増殖が抑制され(Blood,87,2878,1996),この抑制はG2/M arrestである(Leuk. Res.,22,383,1998)。 4.CD34+CD33-,CD34+CD38-,CD34+HLA-DR-などの造血幹細胞分画でのWT1の発現量は,白血病細胞に比し,約1/10以下であり,白血病細胞でのWT1のaberrant overexpressionが示唆された(Blood,89,1405,1997)。 5.myeloid progenitor 32D細胞で,WT1遺伝子を持続発現させると,分化が抑制され,増殖が促進され,WT1遺伝子のoncogenic機能が明らかになった(Blood,91,2969,1998)。 6.マウスの骨髄細胞に,WT1遺伝子を,レトロウィルスベクターを用いて導入すると,G-CSF存在下で,コントロールに比し,有意に多くのCFU-GM, CFU-G, CFU-Mコロニーが形成されるとともにその分化が抑制され,WT1遺伝子のoncogenic機能が明らかになった(Leuk.Res.,23,199,1999)。 7.WT1 17AA(+)/KTS(+)は,myeloid progenitor 32D細胞のアポトーシスを,ミトコンドリアからのチトクロームCのreleaseよりも上流で抑制した(manuscript in preparation). 8.FACS sortingしたヒト正常骨髄造血幹細胞のsingle cell PCR解析から,ヒトCD34+造血幹細胞の約1.2%がWT1を発現しており,しかもその細胞1個当りのWT1発現量は,白血病細胞のそれと同等であることが明らかとなり,このWT1発現造血幹細胞は,白血病細胞のnormal counterpartであると考えられた。このことから,WT1発現のdownregulationのblockが白血病発症のひき金になると考えられる(Brt.J.Haematol.,116,409,2002)。
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