研究概要 |
わたしたちはこれまでに,胎生期マウス・ラットへの低線量電離放射線照射の影響が大脳皮質の層構築異常として生後も永らく残ることを明らかにしてきた.さらに,胎齢14.5日マウス胎仔全脳においてX線0.5Gy照射群と非照射群の間で発現に差異を生ずる遺伝子群を,大脳皮質層構造形成に関わる重要な新規遺伝子候補と想定し,RLCS法などの分子生物学的手法を用いて探索してきた.そのような遺伝子として,新規細胞接着分子であるマウスIgSF4/SynCAMを見出した.本研究では新たに,SUMO-3,Rab6などのほか,Rab6と機能的に深く連関するRabKIFLやGAPCenAを同定した.探索し終えた遺伝子の機能に踏み込むべく,胎仔脳へのin vivo遺伝子導入法により細胞レベルで遺伝子発現を修飾することによって発生の時空間における神経細胞の分化・移動にどのような影響が及ぶかを解析することを企図した.そこでEGFPでタグ標識した当該蛋白をコードする遺伝子をin vivo電気穿孔(electroporation)法によりマウス胎仔脳に導入する実験系を確立した.さらにIgSF4/SynCAMやGAPCenAについて,in vivo遺伝子導入法により解析するための予備実験として,培養細胞系への導入を行い,EGFPでタグ標識した当該蛋白のドミナント・ネガティブ変異体が培養細胞発現系において実際に機能し得ることを明らかにした.
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