研究概要 |
TGF-βシグナルとRhoB蛋白機能:培養細胞株を用いて,TGF-β刺激により上皮間葉系細胞化生(EMT)が誘導されることを見いだした.また,TGF-β誘導性EMTと浸潤能の関連を見いだした.さらに,TGF-βのRhoGTPasesの発現抑制を蛋白,mRNAレベルで確認し,RhoB蛋白の機能解析として野生型・変異型RhoB発現ベクターを用い安定発現細胞株を樹立して,EMT誘導能,細胞増殖能,アガロース寒天培地増殖能,遊走・浸潤能について検討した.TGF-β刺激伝達系においては主にSmad系抑制経路とMAPKsカスケード(ERK1/2,JNK/SAPK,p38MAPK)の存在が知られるが,浸潤転移形質獲得のシグナル経路においてMAPKsカスケードが関与していることを示した.膵癌の遺伝子異常と浸潤転移能:K-Ras,DPC4,TGF-βRII遺伝子変異状況の異なる膵癌細胞株を選別し,シグナル分子のK-Ras,DNRasおよびRhoB,MEK1/2,SMAD4のDNとCA formを遺伝子導入した発現安定株を用いて,細胞生物学的実験手法によりTGF-βによる浸潤転移形質獲得機構を検討し,またTGF-β刺激下におけるEMT検索,RhoB蛋白・Cdc42蓄積とカドヘリン発現を検討して,遺伝子異常に遺伝子異常に基づくRas蛋白活性化によるTGF-βシグナリングの変化および浸潤転移能を示した.同時に,膵癌切除標本においてK-Ras,DPC4遺伝子変異を確認するとともに,TGF-βシグナル関連因子・浸潤転移関連因子・間葉系形質の遺伝子・蛋白発現と腫瘍組織内局在を検討し,臨床病理学的進行度との相関について統計学的に解析した結果,cadherin, integrinの癌細胞の浸潤・転移における関与機序を臨床膵癌組織,臨床病理学データ,膵癌細胞株において示した.
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