研究概要 |
IFN-α併用化学療法の作用機序の解析 1)ヒト腫瘍移植ヌードマウスモデルにおける抗腫瘍効果と血管新生抑制作用 ヒト肝癌細胞株を用いて,ヌードマウスに腫瘍移植モデルを作成した。IFN-α,5-FU, IFN-α+5-FUの抗腫瘍効果を腫瘍径の計測から検討したところ,IFN-α/5-FU治療群に最も強い抗腫瘍効果を認めた.同治療群におけるmicro-vessel densityが他群に比べ有意に低下していたことより,IFN-α併用化学療法の作用機序として血管新生抑制作用が示唆された.さらに種々の血管新生因子(VEGF, angiopoietinなど)のmRNAおよび蛋白の発現量を検討したところ,血管新生抑制はangiopoietin2を介した機序であることが示唆された. 2)Tumor necrosis factor-related apotosis-induced ligand (TRAIL)とそのreceptorを介した抗腫瘍効果 ヒト肝癌細胞株と末梢血単核球を用いたin vitroの検討で,IFN-α+5-FU刺激により末梢血単核球ではTRAILが,肝癌細胞株ではTRAIL receptorの発現が増加した.さらにCytotoxic assayより,末梢血単核球中の主にNK細胞と単球が,一部TRAIL/TRAIL receptorを介して肝癌細胞に対する細胞障害作用を有することが明らかとなった. 3)臨床例におけるIFN-α/IFN receptor(IFNR)の検討 IFN-α併用化学療法を施行した進行肝細胞癌20例に肝生検を行い,IFN-α/β receptor(IFNAR)蛋白の発現を免疫染色にて評価し,臨床効果との関連性を検討した.IFNARの高発現例(12例)では全例に臨床効果が認められたが,非発現例8例では同療法が全て無効であった.IFNAR蛋白の発現が本併用療法の抗腫瘍効果における細胞内シグナリングに大きく関与していることが示唆された.
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