研究概要 |
骨髄組織に関節リウマチ(RA)の主病巣があると考え、骨髄組織内の病態を検討してきた。RAでは線維芽細胞様間質細胞が初期から骨髄内、関節内いずれにも存在する病変であり、またRA病態を形成する機序として、血球系細胞と骨髄中の間質細胞(ナース細胞)が重要であることをこれまで明らかにしてきた。この研究ではまずRAにおける骨・軟骨破壊進行に関して、ナース細胞に支持された末梢CD14陽性細胞に着目し検討した。末梢血CD14陽性細胞はRAナース細胞との供培養により大型の単球様細胞に分化し、この細胞はTRAP陽性であり、複数のMMPの発現が認められ、特にMMP2,9(gelatinase A/B)の発現が強く認められた。これらの細胞は35Sラベル軟骨を用いた軟骨破壊活性の検討により、表面をコラーゲナーゼで変性させた軟骨に対して破壊活性を示し、病巣部において滑膜組織とともに軟骨破壊活性を持つことが示唆された。またTRAP陽性単核細胞は単独培養下にサイトカイン刺激(IL-3,IL-7,GM-CSF)により多核細胞への誘導活性を認めた。ここで誘導された多核細胞はTRAP陽性であり、Vitronectin receptor, Calcitonin receptor, carbonic anhydrase II, MMP-9,actin陽性で,リン酸カルシウム焼結ディスクや象牙切片上に吸収窩が碓認され形成されたTRAP陽性多核細胞は破骨細胞としての表現系を有していた。以上の結果からナース細胞により分化誘導されたTRAP陽性細胞は、骨、軟骨破壊に関与していることが証明され、関節内、骨髄内いずれの場でも関節破壊に重要な働きをしていると考える。さらに、骨髄内での変化がRAの病巣形成上重要であることを示す臨床的な所見としてjuvenile chronic arthritis(JCA)で見られる成長軟骨障害に注目した。RAのモデルとして使用されているcollagen induced arthritis ratでの関節炎発症時の成長軟骨の変化を観察し、関節炎発症の初期から成長軟骨の著しい障害が生じ、この際肥大軟骨層でのVGEFとMMP-3の発現亢進が蛋白レベルで確認された。このように成長軟骨が存在する状況では成長軟骨破壊が生ずることは骨髄組織に病態が存在することを示す所見と考えられた。
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