配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
2003年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2002年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2001年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
敗血症病態の心筋細胞は細胞内情報伝達に変化を来たし,アドレナリンβ受容体を介した陽性変力作用が減弱する。敗血症における心筋細胞内情報伝達の変化はGsα蛋白の減少を伴うが,本研究では,遺伝子改変動物や盲腸結紮・穿孔による敗血症マウス(CLPマウス)とウサギ敗血症モデルを作成し,Gsα蛋白減少の原因を検討した。 初年度に完成させたCLPマウスのGsα蛋白は約12時間後より減少し,約36時間後には約45%に減少した。抗TNF-α抗体,抗IL-1β抗体,抗IL-6抗体,iNOS選択的拮抗薬FR260330では心筋のGsα蛋白の減少を改善させず,炎症性サイトカインのノックアウトマウスにおいても敗血症心筋のGsα蛋白減少を改善できなかった。 次年度よりCLPモデルを用いてnuclear factor-κB (NF-κB)の遺伝子治療をした結果,心房筋に取り込みが高く,炎症性サイトカインや炎症物質の産生を抑制できた。ウサギ敗血症モデルでも同様の結果となったが,NF-κB遺伝子治療ではウサギ敗血症心房筋で減少するGsα蛋白は有意に改善できなかった。この研究過程で,心房筋における細胞内情報伝達もGsα蛋白の減少により作用が減じられることがわかり,学会誌に報告した。 研究の最終年では心房筋で炎症が惹起される要因として,LPSの受容体であるToll-like受容体4(TLR4)が高発現していることを免疫組織染色とノーザンブロッド解析で見出し,更に,macrophage migration inhibitory factor (MIF)のノックアウトマウスが心房筋のTLR4発現を抑制し,敗血症によるGsα蛋白の減少を改善させることを見出した。以上の結果より敗血症でのGsα蛋白の減少はTLR4を介するNF-κB以外の要因,すなわちMAPキナーゼを介した系の関与が関与する可能性が示唆された。
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