研究概要 |
目的: 本研究では手術侵襲-外科的切開-で惹起されるSDHニューロンの反応に対するHal, Isoの栄養のSDHニューロンの興奮性の増大に対する術中Hal, Iso投与の抑制作用を検討した. 対象と方法 8週齢のSDラットを2〜3%Hal麻酔下で人工呼吸とし,脊髄をT2/3で横断し,中脳より吻側の脳内容を吸引し徐脳後,Hal投与を中止し無麻酔とした.L2〜L5をlaminectomyし固定し,脊髄表面をKrebs液で潅流した.硬膜切除し,軟膜を約1mm2除去し,タングステン電極(10-12MΩ)を脊髄表面より1000μmまで刺入し,腰・腎部の有毛皮膚に受容野(Receptive field : RF)を有するWide-dynamic-range (WDR)ニューロンの単一活動電位を細胞外記録した.Hal, Isoはプロトコールを用いて投与し(Figure 1),RF中心の皮膚,皮下,筋膜,筋肉を1cm切開し,4-0ナイロン糸を用いて2針縫合した.Hal, Iso投与前・後には,自発活動,RFに対する非侵害・侵害刺激による応答を記録した.切開・縫合中に惹起される反応を記録し,切開後の自発活動,非侵害・侵害刺激による応答を2時問まで経時的に記録した. 考察と結語 外科切開後,コントロール群(無麻酔)のSDHニューロンは興奮性が増大した.すなわち,非侵害,侵害刺激に対する反応性が増加し,RFが拡大した.刺激に対する反応増加はprimary hyperalgesiaに対応し,切開部の末梢神経の感受性増大(peripheral sensitization)とcentral sensitizaionに起因すると考えられている.一方,RFの拡大は主にcentral sensitizationに起因すると考えられている.Hal, Isoともに外科切開・縫合中のSDHニューロンの活動電位頻度を濃度依存性に抑制したが,術後のSDHニューロンの刺激に対する興奮性増大(刺激に対する応答とRF増大)はコントロール群(無麻酔)に比べて差がなかった.外科切開中のSDHニューロン活動電位の発生頻度や術後の自発活動と,術後のRF増大との間には有意な相関を認めなかった.以上より,Hal, IsoともにSDHニューロンを直接抑制することが示された.しかし手術侵襲を術中抑制すること自体が,術後のSDHニューロンの興奮性増大を抑制しなかった.
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