研究概要 |
腎細胞癌は化学療法,放射線療法に感受性がなく,進行性腎細胞癌に対する治療としては現在のところインターフェロンαやIL-2などのサイトカインの全身投与が主に行われている。しかしながら,その効果は満足できるものではなく,腎細胞癌に対する新しい免疫療法の開発が期待されている。 樹状細胞は活発な運動能を有する最も強力な抗原提示細胞として、T細胞の活性化の主役を担っており,癌治療においても注目されている。我々は,より高い抗腫瘍効果を得ることを目的として1親等の家族をドナーとした樹状細胞療法に着目し、マウス腎癌モデルを用いてhemiallogeneic DCについて検討を行った。その結果hemiallogeneic DCはsyngeneic DCおよびallogeneic DCと比較してより高い抗腫瘍効果を有することが確認された。この抗腫瘍効果はCD4+T細胞により抑制されており、特にCD4+CD25+T細胞の影響が考えられた。hemiallogeneic DCによる免疫療法が腎癌の新しい治療法となる可能性が示唆された。また、ヒト腎癌に対する樹状細胞療法の応用をすすめるために、当院においてヒト末梢血単核球より多量に樹状細胞を誘導するシステムが確立された。 癌ワクチン療法におけるサイトカイン遺伝子治療併用の可能性についてもマウスモデルを用いて検討した。特に、インターロイキン-12遺伝子治療は癌ワクチンによるCTLの誘導を増強する効果を有するとともに、腫瘍内へのT細胞浸潤を促進し、癌ワクチン療法の抗腫瘍効果を高めることが示唆された。今後臨床応用が有望な治療法であると考えられた。
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