研究概要 |
1)頭頸部癌におけるβカテニン過剰蓄積の原因を探るため,ダイレクトシークエンス法により,APCとβカテニンの遺伝子変異を検討し,APCについて15例中1例にAPCのアミノ酸の異常を伴う遺伝子変異が見られた.一方,βカテニンについては,頭頸部癌31例を対象としたが,遺伝子変異は認められなかった.頭頸部癌においては,βカテニンの過剰蓄積の機序としてAPC及びβカテニン遺伝子変異の関与の頻度は低いと推測された. 2)血管新生抑制因子による腫瘍増殖抑制の検討 VEGF, bFGFなどの血管新生増殖因子によって誘導される血管新生を血管新生因子非特異的に阻害するとされるFumagilin誘導体であるTNP-470によるVEGF産生腫瘍の増殖に対する影響を検討した.VEGF産生腫瘍OKK-LN/pCIneo-VEGFをヌードマウスに移植する際に同時にTNP-470を投与した.投与群(n=5)は非投与群(n=5)にして35日後,42日後で腫痕体積は約1/3となり有意な抑制が認められた.また,ヌードマウスの生存日数もTNP-470投与群で有意な延長が認められた. 3)Survivinを用いた腫瘍特異的免疫療法の可能性の検討 IAPファミリー分子、survivinがCTLの標的となりうるか評価するため、survivinのアミノ酸1次構造より、日本人に一番多いHLAアリルであるHLA-A24の結合モチーフを検索し、T細胞のエピトープの候補となる3種類のペプチドを合成した。これらのHLA-A24結合能力を調べ、さらにペプチドをパルスした樹状細胞を用いて、HLA-A24拘束性にペプチドを認識するCTLを癌患者末梢血より誘導した。このCTLはHLA-A24陽性survivin陽性の悪性腫瘍細胞株を障害することが可能であった。このことは,多くの悪性腫瘍で発現を認めるsurvivinがHLA-A24陽性の癌患者に対する腫瘍特異的免疫療法の標的分子となり得ることが示された。
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