配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2001年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
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研究概要 |
マウスの切歯の発生において唇側のエナメル上皮は下顎長軸方向に成長し,その上皮端においてApical Bud(Harada, H., Ohshima, H. Arch.Histol.Cytol,2004)を形成する.Apical Budには切歯が持続的に成長するためのエナメル上皮幹細胞が存在する.線維芽細胞増殖因子(FGF)-10の欠損マウス,中和抗体や上皮-間葉の組み替え実験の解析から,FGF-10が欠損するとApical Budが形成されない.よってこのApical Budの維持にFGF-10が重要な働きをしていることが示された.さらに間葉系幹細胞もまたApical Budから分泌されるシグナル分子によって同時に維持されていた.すなわち,切歯の幹細胞nicheは,歯胚の形態形成と同様に上皮-間葉の相互作用によって維持されていると考えられた.また、voleの臼歯も切歯同様に歯冠を形成し続けるが、臼歯の形成端にもapical bud様の組織が存在し,周囲にFGF-10が発現し続けている.マウス切歯,臼歯,Vole臼歯を比較すると、歯冠形成から歯根形成に移行するためには,FGF-10の発現が消失することが必要であると考えられる.そこで,FGF-10欠損マウスの切歯を腎臓被膜下に移植し,E20(FGF10欠損マウスはP0で死亡)移行の切歯の成長を観察した.その結果,FGF-10を発現する切歯は持続的に唇側にエナメル質を作り続けたのに対して,FGF-10欠損マウス切歯の唇側は舌側と同様に象牙質形成はみられるもののエナメル質形成は途中で停止していた.さらに,ケラチンを用いた免疫組織学的検索でエナメル上皮は断裂し,象牙質表面への歯小嚢細胞の進入が観察された.これらの結果は,FGF-10の発現が消失することで歯冠形成から歯根形成に移行することを示している.本研究成果は,歯根形成のメカニズムを示す新たな知見である.
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