研究課題
基盤研究(B)
歯根膜は歯周組織の再生および恒常性維持において重要であることは良く知られており、歯根膜線維芽細胞が高いアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を示し硬組織形成能を有することや、BMPなどの骨誘導蛋白あるいはDexamethazoneの添加により骨組織が形成されること、産生された接着伸展因子およびFGFによりALP活性が阻害されることなどが報告されているものの、その詳細に関しては充分に明らかではない。本研究では、培養歯根膜細胞の機械的圧刺激(咬合圧)に対するmRNAレベルの細胞応答を調べ、細胞増殖、細胞分化、機能発現がどのように変化するのかについて詳細に検討している。平成16度は、ラット切歯歯根膜培養細胞を分離・継代培養し、3継代目の細胞をType I collagenコートしたBioFlex plateに播種し、対照群、伸展群に分け、伸展群はFX-4000T(多方向伸展装置:FLEXCELL社/USA)にて、6 cycles/minの頻度、伸展率9、18%で12時間、1、3、5日の周期的伸展刺激を細胞に与えた。mRNAレベルの細胞応答をType I collagen(Coll-I),Fibronectin(FN),Alkaline phosphatase(ALP),Basic fibroblast growth factor(b-FGF),Bone morphologic protein2(BMP-2),Bone morphologic protein4(BMP-4)に関してLightCyclerを用いた定量的Real time Polymerase Chain-Reaction(RT-PCR)法にて検討し、得られた定量データーをSecond derivative maximum法にて解析した。その結果、対照群と比較して伸展群はすべてにおいて高いmRNAの発現が認められると共に伸展の大きさに比例しており、Coll-I、FN、ALPは12時間目、b-FGF、BMP-2、BMP-4は、1日目にピークがみられた。一般に、骨原性細胞の初期分化マーカーであるALPや歯根膜の基質を構成するColl-I、細胞の分化マーカーのFN、未分化な歯根膜細胞の増殖を促進させるb-FGF、細胞外基質の産生調節をするBMP-2、BMP-4などは、いずれも歯根膜細胞の石灰化に伴い増加することが知られている。これまでに得られたデータから、歯根膜細胞は機械的刺激により骨原性細胞へ分化するものの、未分化な細胞に誘導、調節され、細胞密度を高めることにより歯根膜の再生を促進すると考えられ、機械的刺激は、歯根膜の恒常性の調節に関与していることが示唆された。
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