研究概要 |
本研究は,歯冠修復用セラミックス試片を口腔疑似環境にて保管した後の疲労特性の測定,実際の口腔内での歯冠修復用セラミックス破折例の原因分析,セラミック破折例と得られた疲労特性との検討,から構成されている. 初年度の予備実験および文献考察よりを口腔疑似環境としては精製水中37℃が,疲労試験には2軸曲げ試験が適切であると判断したため,本年度は前年度に作製した歯冠用セラミックスのキャスタブルセラミツクス1種類、熱圧入型セラミックスの試験片を37℃精製中に1年間保管したものについて,2軸曲げ試験を用いた疲労試験を行った.1年間の精製水保管後と製作直後の物性値を比較するとキャスタブルセラミックスでは水中保管により静的疲労,繰り返し疲労のいずれの物性値も減少したのに対し,熱圧入型セラミックスでは静的疲労,繰り返し疲労のいずれの物性値も向上していた.この原因として水中浸漬によりセラミックス表層の成分の変化が考えられるがより詳細な検討が必要である.さらに,37℃の精製水中でのより長期間の保管による変化については現在継続して検討中である. また、対照となる牛歯の2軸曲げ強さの疲労強度に及ぼす浸漬液の違いを検討したが,浸漬液の違いは認められなかった. また、口腔内での歯冠修復用セラミックス破折例に関しては収集できた資料数が想定外に少なく,それらの破折原因と歯冠修復用セラミックス疲労特性の関係は残念ながら明瞭にはできていない.そのため今後も破折例の収集を行う予定である. これらの研究成果の一部はIADRなどの国際学会ですでに発表し,現在論文投稿の準備を行なっている.
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